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メールマガジン2017年秋号「視察の機会をMICE施設整備へ有効に活用するために」(2017/11/30)
視察の機会をMICE施設整備へ有効に活用するために
主任研究員 木村 孝史

MICE施設整備の検討過程で、行政や設計会社の担当者が他都市の施設を参考にするケースは少なくない。施設構成や規模、あるいは設置目的が類似の施設があれば、視察により会場の規模やスペック、MICE参加者の雰囲気などを体感することもできる。こうした機会をより有効に活用するには、押さえておくポイントがある。


事前準備で情報の整理を
まずは事前準備。自都市の施設整備で検討中の事項や、課題となっている点を挙げてみる。都市としての方針や施設のあり方を定める調査段階か、利用ニーズに対応する会場の種類や規模等を検討する計画段階かによっても項目は異なる。それに合わせて視察候補をいくつか挙げることから始まる。視察先には、ヒアリング事項だけでなく依頼状を送付しておくと先方の対応も円滑に進む。

MICE施設であれば、視察はできれば繁忙期を避け閑散期の2月や8月が良い。催事の最中でもBtoCの催事なら一般参加者と同様に入場可能だが、BtoBの催事はクローズドである場合が多いため関係者以外は立ち入りできない。視察の時期がどうしても繁忙期にかかる場合は比較的催事の少ない月曜日や定期点検日を狙うのも一つだ。

現地を見なければ把握できない情報が得られる点で、視察は非常に意義がある。会場面積や会場料金など公開されている情報があっても、ホワイエやロビーなどの共用スペースの広さ、関係者以外は見ることのできないバックヤードなどの状況は現地でないとわからない。また、MICE開催に重要な遮音性や視認性、設備の配置や備品の選定などへの細部に及ぶ工夫が分かると、設計与件や予算確保について新たな課題が明らかになることも想定される。

視察は施設内部に限らない。タクシーに乗る、近隣の商業施設や飲食店に立ち寄る、近くのホテルに泊まることで、地域の関係者の声を拾うこともできる。立地環境はどうか、そもそも地元にMICEが受け入れられ、施設の主な催事情報が周辺の商業施設や交通機関と共有されているか、などアンテナを張って訪問したい。

ヒアリングにより本音を引き出す
MICE施設の催事というと、コンベンションや展示会のイメージになるかもしれないが、実はコンサートやエンタメ、公共のイベント、地元団体のパーティなど様々な催事に利用され稼働を確保している。事業報告書やイベントカレンダーである程度の公開情報は事前にチェックできるので、視察では主な利用団体や参加規模、稼働を支える施設管理や誘致活動を行う職員数や体制、大規模MICE受入時の留意点などの話もぜひ聞いておきたい。ヒアリングを通じ、会場別の利用形態の特徴や、近隣施設との連携事例、コンベンションビューローとの協力体制、と様々な収穫が期待できる。

MICE施設整備は、ハード面の施設とソフト面の運営とセットで推進すべきであるが、利用者の状況や施設の組織、体制などソフト面に関しては外部からは分からないことが多い。視察では施設を見学するだけでなく、メールや電話では聞きにくいこれらの内容を直接ヒアリングする絶好の機会だ。また、外見上は充実しているように見えても、催事によっては搬入出の際に使いづらい施設・会場であることが開業後に顕在化する問題もよく聞くので、先駆者のこれらの思いを今後の整備に活かしたいところである。